【星野 源】星野源のイメージをアップデートさせたい

    約2年振りのニューアルバム『Stranger』、5thシングル「ギャグ」(アニメ映画『聖☆おにいさん』主題歌)を連続リリースし、さらに7月19日には初の武道館ライヴが! 再び精力的に動き始めた星野源の“現在地”を探るーー。
    取材:森 朋之

    どんな場所にいても疎外感を感じてしまうんです

    今日は5月1日、アルバム『Stranger』のリリース日です。無事に発売できて、ホッとしたところもありますか?

    ホッとしたというよりも、“嬉しい”みたいな気持ちが一番大きいです。“やっとみんなに聴いてもらえる、やったー!”っていう。いろんな人が買ってくれてるみたいだし、嬉しいですね。

    このアルバムに対する、星野さん自身の手応えはどんな感じだったのですか? きっと、これまでの作品と違う感覚があると思うのですが。

    そうですね…。毎度毎度、全部やり切ったという気持ちはあったんですけど、今回は以前の比ではない感じでやり切れたと思いました。真っ白になりました。

    制作中から“今までとは違う作品になる”と思ってました?

    作ってる時はどうしても想像の範疇というか、どんなアルバムになるのかな?って思いながらやってるんですけどね。ただ、なるべく“これでいいや”って思わないようにして、もっと面白く、直せるところはどんどん直していこうという気持ちでやってました。その途中は“どうなるんだろう?”っていう感じのほうが強かったけど、1回倒れて、かなり冷静になれたんですよね。音楽を聴けない時間もかなりあったので、そこでリセットできたというか。その上で曲順も決めたし、ジャケット、アルバムのタイトルを含めて、かたちになっていって。どうなるか分からないというところから、“そうか、こういう曲たちができたんだな”って地に足を着けて考えることができたというか。

    入院したことは本当に大変だったと思いますが、『Stranger』というアルバムを客観視できたことは良かったのかもしれないですね。

    うん、ものすごくいいことだと思います、僕も。もともとは2月にリリースする予定だったんですけど、2月に出さなくて本当に良かったなって。そのまま進んでたら曲順も違ってただろうし、タイトルも“Stranger”じゃなかったかもしれないし…。まぁ、ぼんやりと候補の中にはあったんですけどね。倒れてから、より色濃くストレンジャーっていう感情やビジョンが見えてきて。

    いろいろな意味合いを持っている言葉ですが、星野さんはどんなふうに捉えていたのですか?

    最初は“変な人”とか“奇妙な人“っていうイメージだったんです。でも、調べていくうちに”知らない人”や“よそ者”っていう意味もあることを知って。このアルバムを録ってる時はかなり追い詰められていたし、ちょっと頭がおかしくなってたんですよね。あまり表に出さないようにはしてたんですけど、ノイローゼ状態だったというか。それも含めて“変な人”っていう感じがあったし、どこかで違う自分、まだ見ぬ自分になりたいという気持ちもあったんです。俺の知らない俺になりたい、というか。

    なるほど。

    ただ、やっていくうちにどんどん孤独になってしまったんですよね。自分を追い込むことで周りが見えなくなって、どんな場所にいても疎外感を感じ始めて。“よそ者なんだな”っていう感覚ですよね。それは子供の時からあったんだけど、アルバムのレコーディング中に一番強くなったんです。そういういろんな意味が“Stranger”に合致しちゃったっていう。

    ギリギリの状態になるまで、アルバムの制作に没入したということですよね。

    あと、忙しかったですからね、音楽以外のことでも。単純に寝てないとか(笑)。

    ちなみに星野さんの疎外感は、今も続いてるのですか?

    うん、あります。

    今って、たくさんの人が星野さんの表現を受け取ってるわけじゃないですか、音楽、本、映画などを通して。そういう状況であっても、疎外感は消えない?

    消えないんだなってことが分かりました。もちろんいろんな人に自分の音楽を聴いてほしいし、開けた表現をしていきたい。でも、大きな場所でやればやるほど、お客さんの人数が増えれば増えるほど、孤独感は増すんですよ。

    そうなんですね…。

    あと、自分の仕事の規模が大きくなって、ハードルみたいなものが高くなるにつれて…寂しかったですね。でも、それでいいんだと思います。こうやってリリースできたことで、その孤独は必要なものだって分かったので。

    極めてシリアスな状況で制作されたアルバムだと思うのですが、サウンド自体はすごく広がってるし、自由度もアップしている印象を受けました。SAKEROCKとしてやってきたことも含めて、“星野源の音楽”がしっかり描かれてるな、と。

    あ、そうかもしれないですね。以前はなんとなく、SAKEROCKでやってることと自分の歌は分けようと思ってたんです。でも、それはもうどうでもいいやと思って。どっちも自分のカラーだし、分ける必要もないなっていう。SAKEROCKでやってきたことも注ぎ込みたかったし、音楽を始める前に好きで聴いてた音楽も盛り込みたくて。ジャズとか、ポップス的な要素とか…。

    星野さんが好きだったというCHAGE and ASKAも?

    そうですね! チャゲアス、ユニコーン。B'zも大好きなんですけど、その要素は入ってないかな(笑)。まぁ、そういうこともひっくるめて自分の歌、自分の音楽を表現できたらなって。

    そうやって自分を解放できたのは、何がきっかけだったのですか?

    解放できたというより、自分でそうなるように持っていったんですよ。(1stアルバム)『ばかのうた』、(2ndアルバム)『エピソード』と作ってきて、“自分が自然に歌を作ると、こうなる”っていうラインができてきた気がして。聴いてくれるファンの人たちの中にも“星野源らしさ”が出来上がってきたと思うし、ちょっと違うことをやると“らしくない”って言われたりすることもあって。それが
    窮屈というか、ちょっと不自由だなって思えてきたんですよね。自分のためにもどんどんアップデートしていきたいし、みんなの中の星野源のイメージもアップデートさせたいなって。それは今までやってきたことを切り捨てて違うところに行くというより、自分が好きなものの範疇の中で、まだやれていないことをやっていくってことなんですけどね。そういう作業をずっとやってた感じもありますね、今回のアルバムは。