L→R トムソンガゼル(Ba)、ゴッサム武志(Dr&Per)、黒沢ビッチたつ子りん(Tatsukoring)、サコ、a.k.a.懲役八年(Banjo&Mandolin)、荒川貴文(Electric Guitar)

    L→R トムソンガゼル(Ba)、ゴッサム武志(Dr&Per)、黒沢ビッチたつ子りん(Tatsukoring)、サコ、a.k.a.懲役八年(Banjo&Mandolin)、荒川貴文(Electric Guitar)

    【イギリス人 インタビュー】
    笑顔とロックンロールが最強

    忘れかけてたあの頃の気持ちと忘れちゃいけない気持ちを思い返させてくれた、イギリス人のアルバム『SMILE』。純粋で真正直な言葉と温かみあるサウンドで鳴らされる10曲に思わずあふれる笑顔。やっぱり、笑顔とロックンロールが最強!

    アルバム『SMILE』が完成しましたね。

    たつ子りん
    今作はほぼ新曲なんですけど、とにかく時間がなくて。1日1曲だと間に合わないんで1日で4曲作ったり、ギリギリまで曲を作ってました。15曲作ったんですけど、メンバーから“15曲も覚える時間がない!”と言われて10曲に収まりました。

    ずいぶん現実的な話ですね(笑)。しかし、アルバムはそんなバタバタも感じさせない、メンバーの人柄やバンドの個性がギュッと凝縮された作品になってますよ。

    たつ子りん
    今回、エンジニアに杉山オサムさんを迎えたのもすごく良くて。好きな音楽が僕と近いというのもあるんですけど、僕が“こうしたい”と言ったアイデアを全てポジティブにとらえてくれて。“70年代のあんな感じの音に”とか言っても、頭の中に同じサンプル音源が入ってるみたいにスムーズな作業ができたし。“水の中にいて、息が詰まって飛び出した時の音”とか“夜空を見上げて、昔のことを思い出す時間分空けてください”みたいな無茶を言っても全部理解しようとしてくれました。

    それを理解するのはなかなかです(笑)。今作で何か変わる予感や手応えは感じます?

    たつ子りん
    何も変わんなくていいかな? 自分の世界は平和なんで(笑)。ただ、みんな悲しくなる時間は減らないと思うから、みんなが笑顔でいる時間が増えたらいいですね。

    アルバムタイトル通り、聴いた人が“SMILE”になってくれたらいいと。

    たつ子りん
    今回はひとりでいる時間の曲が多いんです。例えば、深夜2~3時にテレビが終わっちゃったけど、寝るのはもったいないなと思う空白の時間。ひとりで漫画を読んだりCDを聴いたり、みんなそんな時間ってあるよね?と思って作った曲が多くて。そんな曲を聴いて目の前のひとりが笑顔になれたら、みんなが笑顔になれると思うんです。

    素晴らしいです! もともとイギリス人の結成時はどんな意識で始めたんですか?

    たつ子りん
    イギリス人を始めて13年くらいになりますけど、バンドを一生やっていこうというメンバーはいなかったと思います。あと、イギリス人を組む前は政治を変えようって気持ちもあって…
    サコ
    嘘つけ(笑)。政治関係のことを歌ってたことなんてあった?
    たつ子りん
    あったあった! そこで政治家になるよりも手っ取り早いのはバンドだろうと思って音楽を選んだ。社会を変えるのに一番手っ取り早いのは、笑わせることなんじゃないかと自分の中で悟ったんです。いろんな問題があるけど、根源を考えたら、笑顔になることが全ての解決策なんじゃないかと思って。そこで笑顔とロックンロールって最強だな!と気付いたら、今につながる方向性が見えてきたんです。そこからここに来るまで長かったですけどね…全然手っ取り早くなかった(笑)。今回は1stアルバムくらいの気持ちで挑んだし、スコーンと気持ちの良いロックでいこう!と思ってたんですけど、できてみたら3枚目か4枚目くらいの落ち着きがありました(笑)。

    あはは。でも、ここまで積み重ねたからこその独創的なサウンドが出せてると思いますよ。変にカッコ付けたり背伸びをせず、真正直に歌とサウンドを鳴らせているというか。

    たつ子りん
    自然と今の感じになったんです。
    サコ
    僕はバンジョー&マンドリンというパートで他のバンドにはない音だから、今でも弾きながら“これでいいのかな?”って悩むし、分からない部分も多いですけどね。

    歌詞に関しては、難しい言い回しを使わないっていうのもこだわりなんですか?

    たつ子りん
    そうですね。歌詞のひとつひとつで“ここは漢字じゃなくてひらがなで書いたほうがいいかな”って考えるくらい言葉の重みは考えてて。小手先のカッコ付けた言い回しは使わないとか考えながら書いていくと、自然と単純な言葉になっていくんです。あと、僕はなるべく曲と歌詞を同時に作りたくて。じゃないと語感が変になるんです。だから、最初にメロディーと同時に出てきた言葉が一番自然で、それを崩さないようにっていう曲作りをしてるんですけど。結果、辻褄が合ってるから、それが一番いいのかな。

    そうなると、サウンドも言葉とメロディーに寄り添った作り方になっていきません?

    たつ子りん
    なりますね。コードひとつ取っても“これははっちゃけてるから、全部メジャーコードで!”とか、そういうのはやたら考えます。コードも含めて詞になってるんです。あと、僕にはマイナー調の曲は一生作らないってポリシーがあって。画家のルノワールが“現実の世界で悲しいことは事足りてる。あと必要なのは楽しいことだから、私は楽しい絵だけを描くんだ”みたいなことを言っていたんです。僕らも悲しい時に一緒に泣いてあげるより、缶コーヒーのひとつでも持って行けるようなバンドになりたいので、明るい曲しか作りたくないんです。泣ける作品もいいと思うんですけど、やっぱり最後は笑いたいじゃないですか。

    すごくいいと思います! 今作に収録された「などわ」はこの曲を題材にした短編映画も公開される、イギリス人の代表曲と言える曲ですが。この曲ができた経緯は?

    たつ子りん
    ラブソングやメッセージ性のある曲を避けていた時期だったんですけど、久しぶりにラブソングを作ろうと思って「わどな」という曲を作ったんですね。その曲を作ってる過程をドキュメントのように曲にしたら面白いんじゃないかと思って作ったのが「などわ」だったんです。結果、裏側を書いた曲のほうが残ってCD化されるというのが面白いし、作ってみたら意外とメンバーにもウケが良くて、口コミも広がって。
    サコ
    当時、僕はバンジョーしか弾いてなかったんですけど、たつ子の勧めで「などわ」を作った頃からマンドリンを弾くようになったんです。現在のイギリス人のサウンドにつながるきっかけにもなった曲ですね。
    たつ子りん
    僕はとにかく音楽が好きで、どの時代のロックも好きだから、やりたいことが頭の中で歪に動いてるんですけど、この曲が受け入れられてからはいろんなことがやりやすくなった気がします。「などわ」ではヒップホップのビートでアコギの弾き語りをしていて、新しいことはやってるけどそれが正解かは分からない。でも、そこで“新しいことをやるのに、正解なんてないんじゃない?”と思うようになったんです。スーツだった僕が今のような派手なファッションになったのもその頃からで。“パンクの先輩に怒られようが、ビーチサンダルで来ちゃえばいいじゃん! 髪も立てずに派手な帽子を被って、首からメトロン星人の人形を下げて、バズ・ライトイヤーを手に持って歩いて、それでいいんじゃねぇの? だってそんなの今までないから、正解かどうか分からないでしょ?”ってサコに言われたんです。俺が理解できないものになれって。だから「などわ」を機にかなり開き直れた感じはありましたね。

    イギリス人というバンドがよく分かる話です! 今後も独自の道を歩き続けてください。

    たつ子りん
    そうですね。今時は分かりやすい“ロックスター”ってのがいないから。いつかきれいな女の子をはべらかして、ドンペリを飲みながらこのインタビュー受けたいです(笑)。

    取材:フジジュン

    L→R トムソンガゼル(Ba)、ゴッサム武志(Dr&Per)、黒沢ビッチたつ子りん(Tatsukoring)、サコ、a.k.a.懲役八年(Banjo&Mandolin)、荒川貴文(Electric Guitar)
    アルバム『SMILE』