焚吐

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    【焚吐 インタビュー】
    テーマはバースデーイベントで得た
    “肯定”

    インパクトのあるタイトルを掲げた最新作『呪いが解けた日』。このミニアルバムは焚吐がこれまで抱えていたものから解放され、新しい世界へと旅立つ過程が描かれた、深い共感を呼ぶ作品となっている。

    今作ですが、どんなミニアルバムを作りたいと思っていましたか?

    このアルバムの最たるテーマは“肯定”です。僕は14歳ぐらいの時に虐められていて、21歳になるまでずっと呪いにかけられているような気持ちがありました。だけど、今年の2月20日にやったバースデーイベントで、ファンの方からの肯定や愛情、声援をたくさんいただいて、自分はこの場所に立っていいんだと思えたんです。だから、“自分を認めて、アーティストとして、人間として歩んでいきたい”という決意を込めて作ったアルバムです。特にリード曲である「呪いが解けた日」は、まさにバースデーイベントで感じたことを綴っています。

    確かに「呪いが解けた日」は今作のキーになる曲ですよね。

    作る前から“この曲は絶対に歌詞が長くなるな”と思っていて。バースデーイベントで得たものが大きすぎて、“1曲に留められるのか?”という気持ちだったんです。曲としては後半のポエトリーリーディングの部分がフックになっていますが、最初は入れる予定じゃなくて。だけど、これをただの間奏で終わらせたら普通の曲になるし、自分がバースデーイベントで心を突き動かされたことの証明になればいいなと思って、こういう構成になりました。この曲に関してはまったく後悔を残したくなかったんです。レコーディングもものすごく苦労しました。特にポエトリーは初めての試みだったので、かなりイメージトレーニングしたんですけど、いざアレンジに乗せてみると力が足りなくて…。最初は淡々と読むポエトリーだったんですけど、この曲のアレンジはかなり激しいので、最後は絶叫ぐらいの心意気で歌い上げました。

    今作は全体的に焚吐さんらしく、ひと筋縄ではいかないような展開の曲が多いですね。

    5曲目の「モラトリアム」は歌詞のメッセージ的には最後に光が見えると言えども、結構後ろ向きな歌詞も入ってるんです。でも、この曲は“サウンド面で後ろ向きにさせすぎないでください”とアレンジャーさんに注文していて。だから、洋楽チックなグルーブ感だったり、クラップを入れてみたりして、ちょっと空元気的な明るさを入れることによって歌詞に集中できる気がするので、そこは上手くはまったんじゃないかなと思います。今作はサウンド面では焚吐の声を聴かせたい、歌詞をより聴き取りやすいアレンジにしたいという目的があったので、アレンジャーの方とはたくさん相談しました。

    この曲は歌い方が他とは違うような気がしたのですが。

    とにかく「モラトリアム」はウィスパーに歌いました。広がりを感じさせる壮大なアレンジになっているので、一種ミステリアスな歌い方にすることで、より伝わるんじゃないかなと。

    なるほど。では、2曲目「返してよ」はどのようなイメージで作りました?

    自分のこれからや、やりたかったことを決意表明したような曲が「呪いが解けた日」なのですが、「返してよ」は対になる曲になっていて、今までの自分を歌詞の中に投影しています。だから、「呪いが解けた日」とセットで聴いてほしいですね。

    呪いにかかっている状態の時の歌詞ですね。

    呪いが解けたことによって視界が広まりましたが、10代の頃に見えていたものが見えなくなってしまったような気もするんです。だから、“自分はこんな大人になりたいわけじゃなかったんだよ”という後悔もあるし、不完全だからこそ「返してよ」みたいな曲もできたのかなと思うと、案外侮れないなと思いますね。今、“「返してよ」みたいな曲書いて”と言われても、きっと書けないと思うし。「神風エクスプレス」をみやかわくんとコラボをしたのが去年の夏ぐらいからなんですけど、そこから“自分がこれからやりたいことは何だ?”とすごく考え始めて…1曲目の「コントロール・ミー」もその時期にできた曲なんです。「返してよ」はみやかわくんと出会う前だったら、たぶんできなかったと思います。その頃は自分が大人になって失ったものに気付いてすらいない状況だったので。だけど、みやかわくんと出会ったことで、いろいろなことを感じて…彼は自分の好きなことに対して真っ直ぐな人間で、その時の直感でやりたいと思ったことを100パーセント頑張っている人だから、そんな彼の姿を目の当たりにして“自分は何してるんだろう?”みたいな気持ちになって、「返してよ」が生まれました。そして、自分を改めて見つめ直して、もがいて、殻を破ったのが「呪いが解けた日」なんです。

    その「神風エクスプレス」は4曲目に収録されていますね。そして、最後の曲「時速40000kmの孤独」はこの作品の結末であり、次に向かうナンバーで。

    歌詞の中にもあるんですけど、隕石の落下する速度が時速40000キロメートルなんです。自分の半生を振り返った時に、自分って隕石っぽいなと思う瞬間があって。この世に産み落とされ、そのまま落ちていくだけ。孤独は自分らしいけど、自分の身を滅ぼすのも孤独なんだろうなと思ってたんですね。だけど、その隕石の落下する速度を追い越すくらいに、新たな感情が自分の中で台頭してきたというか。それが他者からもらった肯定であり…さっきの話につながるんですけど、“あなたが僕を認めてくれたから、孤独を打ち消すことができた”と。これも「呪いが解けた日」と同じくファンの方に向けての曲で、そういった感謝を表せたらいいなと思って作りました。

    現段階ではどういう意味を持つ作品になったと考えていますか?

    間違いなく、焚吐として新しいものが作れたなと。過去の作品を否定するつもりはないけれど、自己肯定することによって“自分のやりたいことをやっていいんだ”という自信にもつながりました。

    取材:桂泉晴名

    焚吐 プロフィール

    タクト:1997年2月20日生まれの21歳。東京都出身。某音楽大学在学中。10歳頃から楽曲制作を始め、それらを人前で歌うことで、自身の苦手とするコミュニケーションの代わりにしてきた。普段の物静かな佇まいとは裏腹に、本音を露わにした鋭利な歌詞と心に訴えかけるような力強い歌声が特徴の男性シンガーソングライター。同じく悩みやコンプレックスを抱えながら生きる若者を中心に共感を呼んでいる。焚吐 オフィシャルHP

    焚吐
    ミニアルバム『呪いが解けた日』【初回限定盤(2CD)】
    ミニアルバム『呪いが解けた日』【通常盤】